1000人のチェロ・コンサートに出演して 2005年6月 萩森 学  

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    5月22日神戸のポートアイランドにあるワ-ルド記念ホールで開催された第3回1000人のチェロ・コンサートに出演してきました。メロマンからは私の他に Tさんも参加されました。1000人のチェロコンサートは、世界中からプロ、アマ問わず老いも若きも男も女もとにかくチェロを弾くことが大好きな人間が神戸に集まりみんなでチェロの大合奏をするコンサートです。1998年に第1回、2001年に第2回そして今年2005年に第3回が開催されました。どうして私がチェロのコンサートに出るのか不思議に思われるでしょう。バイオリンを弾いたのではなくちゃんとチェロを弾いたんですよ。実は約6年前から二人の子供と一緒にチェロのレッスンに通っています。一昨年まで住んでいた栃木では、栃木チェロ協会に参加しその発表会にも出ました。今回はその栃木の仲間達も大挙して出演するので彼らと旧交を温めたいこともあって参加しました。
    ところでチェロばっかり大勢集まって一体どういうことになるのかと思われるのではないでしょうか。同じ楽器ばかりの大合奏でちゃんとした音楽が出来るのはチェロだけじゃないかと思います。バイオリンばっかりの大合奏というと鈴木メソッドの子供達の合奏が有名ですが、あれは皆が同じパート、たとえばビバルディの協奏曲イ短調のソロパートを斉奏しているのでピアノが伴奏をしています。バイオリンばっかりでアンサンブルしようとしても低音が無いのでまともな音楽になりません。しかしチェロは低音は本来の役割ですが高音も高音部譜表の上二線のC音あたりまで張りのあるつややかな音が出て運動性にも富んでいるので、チェロだけでソプラノからバスまで全声部が揃うのです。チェロアンサンブルのための曲もクレンゲルの12声部のチェロのための「讃歌」を始め素晴らしい曲がたくさんあるようです。

        

    写真左:ワールド記念ホール本番直前 写真右:練習のあとサイン責めにあうロストロポービッチ氏

    さて、1000人のチェロコンサートですが、昨年12月頃から全国各地で練習がありました。本番の2日前からはポートアイランドで連日連夜練習がありましたが、それまでに公式練習3回以上あるいは地方での分奏に6回以上出ることが必須義務でした。そこで私は綾部と龍野と神戸での練習に参加しました。どこでも、私は全く知った人はありませんでしたが、チェロ愛好家同士ということで、暖かく迎えてもらい、お知り合いになれとてもハッピーな気持ちになれました。メロマンのことも大いに宣伝してきましたよ。綾部ではMAF管弦楽団というのがありそのチェロパートの6名の方が、首席奏者でチェロの先生でもあるNさんという方のお宅に集まっての練習でした。Nさんは大分前メロマンで弾かれたことがあるとか。龍野では三木露風ゆかりの赤とんぼホールで龍野のオケのメンバーを中心に十数名の練習でした。リーダーは龍野のオケの指揮者でチェロの先生もされているHさんという方で、田園交響ホールには聴きに来たことがあるとのことでした。
    さていよいよ5月20日の夕方からポートアイランドでの練習が始まりました。1000人より多い1069人が集まり、前の数列は、堤剛、岩崎洸、山崎伸子、倉田澄子、林峰男、長谷川陽子、松下修也、ダビッド・ゲリンガスといったそうそうたるチェリスト達が座り、コンサートマスターは林俊昭氏。海外から来た人たちも 100人以上居たようです。曲はクレンゲルの讃歌など比較的短い曲が10曲でしたが、その中に現代の作曲家の曲が2曲ありそのうちの一つ、ロシアの作曲家ロディオン・シェドリンのハムレットバラードはこのコンサートのための委嘱作品で世界初演でした。そして指揮者は、前半は大友直人氏でしたが、後半の現代曲は、チェロの現存最高の巨匠、ムスチスラフ・ロストロポービッチ氏だったのです。私にはハムレットバラードはそれまで最も難しかった曲で、音程が取りにくい、指使いも難しくうまいポジションが見つからない、不快なスルポンティチェロが延々と続く、と好きになりにくい曲でした。ところがロストロポービッチ氏はこの曲に強い共感を持っており、通訳も大苦労の、アメリカ人にもよく分からないようなロシア語かと聞き間違うような英語で、情熱的に、どう表現すべきか、辛抱強く繰り返しイメージを与えてくれました。この曲の冒頭はフォルテで最低音から始まり低弦のメロディーが盛り上がっていくのですが、1000人での響きはゴーゴーともの凄いものでした。いくらでもクレッシェンド出来る感じでした。一方、ピアニシシモでフラウタンド(指板の上でフルートのような音を出す奏法)が続く部分があり、その終息部で最弱音で響きが天空へ立ち上っていくように消えていくようにとロストロポービッチ氏が言いました。そうするとまさにそのように響きが天空に立ち上って消えていきました。そのあとは針が落ちても聞こえるような静寂です。1000人以上の人間が居てこの静寂、まさに奇跡のように思えました。ああ、ここに集まっている人たちは本当に全員音楽に真摯に取り組んでいるんだなあ、自分もその中に参加できて良かったなあと、感動しました。そしてハムレットバラードがいい曲だなあと思いました。

    チェリスト林峰男氏(左)と筆者(中央)と栃木の仲間(右)(グリーティングパーティで)

    ロストロポービッチ氏の言葉で他に印象に残っているのは、自分とコンタクトして(触れ合って)ほしいという言葉です。もっと棒を見ろと言ってしまえば身も蓋も無いのですが、私は実際演奏中ロストロポービッチから目を離せませんでした。なぜなら、いつも音楽を表現していて単にテンポを取っているだけという瞬間はほとんどありません。楽譜ばかり見ているとすぐに取り残されてしまいます。彼の棒を見ながら演奏すると、まさに彼とアンサンブルしている気持ちになります。これが彼の言うコンタクトなのでしょう。
    本番のホールはオリンピックの体操など室内競技が行われるようなスタジアムで真ん中の平場で我々が演奏しお客さんは周囲を取り巻くスタンドで聞いています。会場は満席で急遽平場の空いたスペースにもお客さんを入れていました。最後の音が消えたとき、ああ、あっけなく終わってしまったなあ、と宴の後の空しさを感じました。
    デジカメを持って行くのを忘れ、携帯で撮った写真で画質が悪いことをご容赦下さい。

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